ダイヤモンド構造の結合角が109.47°であることを2つの方法で導いてみました。
この角度は、正四面体の中心から2つの頂点にそれぞれ向かう線がなす角と同じです。
内積を使う方法
この方法が一番エレガントです。

正四面体
正四面体の4つの頂点をA、B、C、Dとします。
正四面体の中心Oを、原点に取ることとします。
さらに、正四面体の辺の長さを1とし、求めたい角(∠AOD等)をθとします。
Oから各頂点に向かうベクトルをそれぞれa、b、c、dとすると、中心(重心)が原点にあるので、
です。この両辺にベクトルbとの内積をとると、
となります。Excelで任意のセルを選び、
=ACOS(-1/3)
と入力すると、1.910633という値が得られます。これはラジアンですので、度に直すと、
となります。
作図で求める方法

正四面体を真上から見た図
正四面体を真上から見ると正三角形BCDとして見えます。
BCの中点をMとすると、
として、MDの距離が求まります。
次に、正四面体の頂点Aは、正三角形BCDの重心Gの鉛直方向にあるので、GDの距離を求めます。
三角形の重心は、中線を1:2に内分するので、
となります。

正四面体の重心を通る断面図
ここで、平面AODで正四面体を切った時の断面図を考えます。
三角形AGDは、∠AGDを直角とする直角三角形なので、ピタゴラスの定理により、AGの距離を求めることができます。すなわち、
です。
ところで、三角錐OBCDは、対称性から、正四面体の1/4の体積があります。つまり、Oは線分AGを3:1に内分する点になり、
です。
よって、各DOGをφとすると、
Excelで任意のセルを選び、
=DEGREES(ATAN(2*SQRT(2)))
と入力すると、(ラジアンから度への変換もして、)70.52878[°]という値が得られます。
求めたい角θはφの外角なので、
となります。
まとめ
ダイヤモンド構造の結合角が109.47°であることを2つの方法で導きました。
今回の導出の過程で、有効数字はExcelで適当に出てきた数字としました。でも、文献では5桁で書いてあることが多そうです。普通の人は、円周率を3桁くらいでしか覚えていないのに、5桁も必要なのでしょうか?(そもそもsp3混成軌道が4つの等価な軌道になるという理論が腹落ちできていない)
趣味にまかせて本を読んでいると、今回のように、なんとなく導出しておかないと気持ち悪い事柄が出てきます。折に触れて残しておこうと思います。
ところで、内積って、使う場面によって強力ですね。今回つくづくそう思いましたし、以前、ベクトルが直交する場合に成分同士の積の和が0になることを証明する際にもそう思いました。
今回、三角形(二次元)の重心は中線を1:2に内分する点、四面体(三次元)の重心は頂点と重心を結ぶ線を1:3に内分する点というところが面白かったです。直線(一次元)の場合には、1:1に内分する点であることは明らかなので、四次元の場合には、きっと1:4に内分する点になるのだと思います。しらんけど。
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