ご冗談でしょう、ファインマンさん(下) | 書評

アメリカの著名な物理学者であるリチャード・ファインマンの回想録の下巻である

摩擦ルミネセンス

読み始めてすぐ、「オー、アメリカヌ、オウトラ、ヴェズ」で、摩擦ルミネセンスの話が出てきた。「暗いところで砂糖のかたまりをペンチで潰してみれば、青い光が見えるはずだ」と書いてある。

これくらい簡単な実験なら、試すことができる。そこで、夜中にペンチを持って、家の台所に行ってみた。しかし、氷砂糖はおろか、昔は常備していたコーヒーシュガーさえ見当たらない。かわりに岩塩の粒があったので、数個潰してみた。

その結果・・・

青い光は見えなかったのである。

仕方がないので、インターネット上で探してみたところ、何名かのYouTuber達が氷砂糖潰しに挑戦していた。しかし、発光を動画に収めることができず、砂糖とともに挑戦自体が砕け散っていた。

恐るべし、摩擦ルミネセンス。

さらに検索を進めたところ、粘着面を張り合わせたガムテープを剥がすとき、摩擦ルミネセンスによって、発光するとの情報を得た。

実際に試してみると・・・確かに、青く光った!

満足して、読書に戻ることにした。

芸術家ファインマン

ファインマンは芸術家でもある。

ファインマン物理学の最初にボンゴをたたくファインマンの写真があり、本を買わなくても、音楽を楽しむ人であることは分かっていた。

ただ、ファインマンは音楽に加えて、絵も描いていたのである。「それでも芸術か?」では、絵に買い手がつくほどであったことが書かれている。

インターネットで画像を検索するとファインマンの絵を何点か発見することができた。輪郭を線でかたどった絵が多い。もし、下書きをしないでこれだけの線が出せるのであれば、相当な腕前である。下書きをしてペン入れをした結果がこれらの絵であれば、僕も練習次第で描いた絵が売れる可能性があるということであり、希望が湧いてくる。

ここである人を思い出した。

糸川英夫である。

糸川英夫は日本のロケット開発の父である。上野の科学博物館に行くと、糸川が開発したペンシルロケットの実物が展示されている。幼いころ、これを見て、よぉし、僕も将来はロケット開発者に・・・とはならなかった。展示を見たのは就職後だったためである。

それはともかく、糸川は科学だけでなく、バレエやチェロ等に興味を持ち熱中した。
ファインマンと糸川は、好奇心が旺盛と言う点で、かなり似た思考回路を持っていたのではないかと感じている。

一番大切な本質

カーゴ・カルト・サイエンス」のpp.294-296には、「徹底的な正直さともいうべき科学的な考え方の根本原理、言うなれば何ものもいとわず『誠意を尽くす』姿勢」が「一番大切な本質」であり、そこをおろそかにすると「科学者としては決して尊敬されない」と書かれている。

エッセンスだけでは何のことか分からないと思う。本文には電荷の値の変遷の話やネズミの迷路の話を用いて分かりやすく書かれているので、是非そちらをお読みいただきたい。

「ご冗談でしょう、ファインマンさん」の上下巻は面白おかしく書かれている。しかし、読みとおしてみると、この「一番大切な本質」に収斂させるために書かれているように思えてならない。

僕も理系のはしくれなので、この「一番大切な本質」を見失わないように行動したい。

R.P.ファインマン、大貫昌子[訳]:ご冗談でしょう、ファインマンさん(下)、岩波現代文庫、2000、ISBN4-00-603006-1

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