ランキンサイクルのPV線図の意味合いを理解する

ランキンサイクルPV線図において、系から得られる(電気)エネルギは、ループが囲んだ面積で表されます。

僕は、この物理的意味が直感的に理解できませんでした。その理由は、エネルギを縦方向に分割し、PΔVを寄せ集めて見積もっていたためでした。これを横方向に分割し、VΔPを寄せ集めてエネルギを見積もることで、ようやく腹落ちしました。

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ランキンサイクル

ランキンサイクルをご存じですか?

火力発電所や原子力発電所では、蒸気タービンを回して電力を得ています。このときの熱力学サイクルがランキンサイクルです。

従来は、「ふーん、そんなもんだよね」というような感じでした。でも、電験三種等の資格を取ろうとしたり、新社会人の教育担当になったりすると、付け焼刃程度には理解しなくてはいけません。

では、早速ランキンサイクルを見ていきます。

ランキンサイクルの模式図

ランキンサイクルの模式図

こちらがランキンサイクルの模式図です。

ランキンサイクルのPV線図

ランキンサイクルのPV線図

そして、こちらがPV線図です。
図中の数字はそれぞれ対応しています。

ランキンサイクルを動作させるには、まず、を用意します。
水は、蒸気に比べて体積が小さいです。また、圧力がかかっていない状態から考えると、PV線図では左下のに位置することになります。

次に、この水を給水ポンプで圧縮します。液体は、圧縮しても体積がほとんど変わりません。しかし、圧力は増すので、ほぼ垂直に立ち上がって、の位置に来ます。

この水をボイラに供給して熱を加えると、少し体積が増え、沸点に達すると飽和液線上に位置します。さらに熱を加えると沸騰して水蒸気に変わってさらに体積が増えます。飽和液線と飽和蒸気線の間では、液体と気体が混ざった状態であり、これを湿り蒸気と言います。

飽和蒸気線を越えると、液体は無くなり、水蒸気のみの状態になります。これを乾き蒸気と言います。
ボイラでは、圧力を一定に保ち続けますので、乾き蒸気の状態でも、加熱に応じて体積は増え続けます。

水蒸気を十分に熱し終えての位置に来たら、タービンに導きます。
湿り蒸気はタービンを侵食するため、乾き蒸気でタービンを回すことが一つのポイントになります。
蒸気は徐々に膨張しながらタービンを回し、圧力が下がっていきます。

蒸気が十分に膨張しての位置に来たら、復水器に導きます。復水器では、冷却水との熱交換によって、蒸気が凝縮しての位置の水に戻ります。これで、熱力学サイクルが一巡します。

PV線図で囲われた面積が出力エネルギになることが理解できない

ところで、なぜPV線図を使うのでしょうか?

それは、設計者が、高効率の発電機を得たいからです。

圧力Pと体積Vを掛け合わせたPVはエネルギです。よって、この図をうまく活用して設計すれば、エネルギを沢山取り出すことができるようになります。
PV線図では、囲われた面積が、ほぼ電気エネルギに変換されるので、この面積を大きくすることを目指します。

ところが、少し前の僕は、この意味を直感的に理解することができませんでした。

あるサイトには、エネルギの増分はPΔVだから、これを一周積分すれば、取り出すエネルギが計算できるとあります。

この考え方だと、縦に分割を入れて、

から

を引くことになります。(本来は無限小に分割して積分します)

すると、2~3の領域の影響が大きいので、ここが取り出せる電気エネルギに最も効きそうです。
でも、2~3のところって、ボイラで沸騰させる工程であって、タービンを回してはいません。つまり、具体的に電気を発生させる仕事をしていません。

ボイラで徐々に増えている水蒸気がところてん式にタービンまで伝わって、タービンを回しているのかもしれませんが、納得できません。


ところが、ある日、突然ひらめきました。

エネルギの変化分は、VΔPで考えてもいいんですよね。つまり、体積が一定の下で、圧力が変化することでエネルギも変化するという考え方です。(話が飛びますが、そうじゃないと、体積の変わらない水の中で、フランシス水車を回してエネルギを取り出すことができません)

そうすると、横に分割を入れて、

から

を引くことでエネルギを求めることができます。これなら、タービンを回す3~4の過程で大きな電力が得られることが直感的に理解できます。また、給水ポンプを駆動する1~2の過程の比較的小さな電力が、必要不可欠な消費電力、つまり損失であることも分かります。つまり、それらの差が、外部に取り出せる電力になります。

まとめ

PΔVで考える面積は、系に与える熱エネルギの収支を計算する方法であり、VΔPで考える面積は系がする仕事の収支を計算する方法です。エネルギは保存されるので、どちらで考えても同じことです。でも、僕は、系が外にする仕事(電気エネルギ)を最大化したいので、VΔPで考える方が理解しやすいです。

2022年1月6日追記

熱力学をもう少し勉強したら、「仕事は、状態量ではない」という記述が出てきました。
状態量は全微分の形で書けますが、状態量でないと、全微分の形に書けないそうです。
熱力学の本を見ると、どれも、PΔVの形しか出てこないんですよね。
VΔPで考えてはいけないのでしょうか?
でも、フランシス水車は回っている・・・

どなたか、詳しい方がいらっしゃいましたら教えてください。

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