水頭って何だ?
電験3種の勉強をしていたとき、「水頭」(すいとう)という言葉が出て来ました。
高さの次元[m]を持つのですが、何のことかよく分かりませんでした。
エネルギーとは何か?
その後、紆余曲折を経て、エネルギーを知れば水頭が理解できることに思い至りました。
さて、エネルギーとは何でしょう?
運動エネルギーだったり、位置エネルギーだったり、熱エネルギーだったり、化学エネルギーだったりして、いろいろに形を変えます。ただし、形態を変えたとしても、合計量は保存されるようです。なぜ、人類はエネルギーという概念を獲得したのだろう?いったい何?
僕は、エネルギーの本質は「力×距離」にあると思います。
位置エネルギー
先ず、位置エネルギーを考えてみましょう。
質量が
の物体に、重力加速度
がかかると、鉛直下向きに
の力がかかります。それを
の高さから
まで持ちあげると、
のエネルギーが蓄えられます。
これは良く知られていることですよね。
エネルギーの単位ジュール
の次元は、力の単位ニュートン
と長さの単位メートル
を掛けた次元です。
運動エネルギー
次に、運動エネルギーを考えてみましょう。
今、静止している質量
の物体を、一定の加速度
で、速さ
にすることを考えてみます。
まず、加え続ける力
は、
![]()
です。
次に、距離を求めなければなりません。
そのために、先ず、加速に要する時間を
とすると、
![]()
なので、
(1) ![]()
と求まります。
これを用いて、加速に要する距離を
を求めると、
![Rendered by QuickLaTeX.com \begin{eqnarray*}L &=& \int_0^T v(t) dt \\&=& \int_0^T a t dt \\&=& \left [\frac{1}{2} a t^2 \right ]_0^T \\&=& \frac{1}{2} a T^2\end{eqnarray*}](https://miscellaneous.tokyo/wp-content/ql-cache/quicklatex.com-4337fe86d648aee9165416f1d39a21e8_l3.png)
となります。よって(1)を代入すれば、
![]()
となります。
力
と距離
が求まったので、この積がエネルギー
になります。
![]()
これも良く知られている運動エネルギーの式です。
圧力エネルギー
さらに、圧力のエネルギーを考えてみます。
今、部屋と部屋の間に
の圧力差があり、部屋を仕切る断面積
の壁を距離
押すことを考えます。ただし、押した前後で圧力差は変わらないこととします。(図中の
は、大気圧からの圧力(ゲージ圧)を示す表記法です)
押す力は、
で、距離は
なので、系で増加するエネルギーは、
です。ここで、
は体積なので、これを
とおくと、
と表すことができます。
余談ですが、理想気体の状態方程式は、
です。左辺は今議論した通り、エネルギーです。つまり、理想気体の場合は、圧力エネルギーが温度エネルギーと等価であることが分かります。
ベルヌーイの定理から水頭を求める
いよいよ、ベルヌーイの定理を理解する時がやってきました。聞きなれない定理名かもしれませんが、恐れることはありません。簡単な足し算と割り算で求まります。
まず、エネルギー保存則によって、問答無用でエネルギーの和を一定値と置くことができます。
つまり、位置エネルギー、運動エネルギー、圧力エネルギーの和を考えて、
![]()
が成り立ちます。
ここで、密度
を導入し、
となることに注意しながら両辺を
で割ると、
![]()
となります。これがベルヌーイの定理です。簡単ですよね?
さらに第1項目を
だけにするために、両辺を
で割ると、
![]()
となります。第1項目から明らかなように、この式は高さ(長さ)の次元
を持っており、これを水頭(head)と言います。つまり、第1、2、3項をそれぞれ位置水頭、速度水頭、圧力水頭と言います。
水頭を使うと、次のようなことが分かります。
例えば、水平方向に
の速さを持つ水を上に向けると
の高さまで吹き上がります。
また、水に
のゲージ圧をかけると水が
まで吹き上がります。
噴水の設計に使えそう。
まとめ
がエネルギーであることを知っていれば、これを力学的エネルギーに加えることによって、ベルヌーイの定理が導けます。位置エネルギーの項が
の次元になるように、ベルヌーイの定理を
で割るなどすれば、水頭が求まります。水頭の式をわざわざ覚える必要はありません。




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