NIM様より素晴らしい解説コメントをいただきました。
元の記事は残しておきますが、本記事末に記載されている、そちらをお読みいただくことをオススメします。
NF(Noise Figure、雑音指数)って何?
この値が小さくて1に近ければ、増幅するときに雑音の比率が増えないので、良いアンプということが分かる指数です。
より具体的に示してみましょう。
今、図1に示すように、ゲインが
のアンプがあり、入力信号と入力雑音の電力をそれぞれ
、
、出力信号と出力雑音の電力をそれぞれ
、
とすると、雑音指数
は以下で表されます。
![]()
これを書き換えると、

となります。
ここで、第2項目は、
という雑音電力が
というゲイン倍されて、
という雑音電力になったということで、理解できます。
では、第1項目は何でしょう?
このアンプを通ることによって、増えた雑音電力ということは解ります。
でも、入力の雑音によってこの値が変化するんですか?おそらくそうではないですね。
回路内の熱雑音が影響して発生する雑音だと思います。
そうすると、第1項目に
を使うことは実際問題としては正しくなくて、これを熱雑音電力
に置き換えてよいのではないでしょうか?(ここで、
はボルツマン定数、
は絶対温度、
は帯域幅です)
改めて式を書くと、
![]()
となります。このブロック図を図2に示します。
ここで、図2を初段だと考えると、
が
となります。アンプに入る入力は和を取って
となり、それがゲイン
倍されて、出力
になります。感覚的に、このブロックで合っていそうです。
アンプを多段接続した時のNF
アンプを多段接続します。
この系全体の
がよくわからないんですよね。
先ず、(1)を用いて、終段の
を表してみます。

ここで、全体の
は、全体のゲインを
として、
![]()
となりますので、(2)の項を逆順にして代入します。ここで、初段の雑音が
であることに注意すると、

となります。
式から分かるように、初段の
は全体の
に直接効くので、低雑音のアンプを選ぶことが重要です。
2段目からのNFは、その前までのゲインで除されるので、影響が少なくなります。
一般的に使われている式が出ましたが、
を
で置き換えたところが、納得できていません。何か別の考え方をすればスッキリ行くのでしょうか?






コメント
アンプの出力雑音 N_o は、入力雑音 N_i がゲイン G 倍されたものに、アンプ固有の雑音 N_amp を足したものになります。
N_o = G N_i + N_amp ・・・(1)
(1)の右辺を G N_i でくくって、雑音指数 NF の式と照らし合わせると
NF = 1 + N_amp/(G N_i)
であることが分かります。
雑音のない理想的なアンプだと
N_o = G N_i
NF = 1
N_amp = 0
です。
物理的な意味を持つ量は N_amp であり、NF はあくまでアンプ接続時の S/N の劣化が分かりやすいように導入された量です。
次に、二段のアンプを接続した場合を考えます。
一段目のアンプのゲイン G_1, 雑音 N_amp1, 雑音指数 NF_1
二段目のアンプのゲイン G_2, 雑音 N_amp2, 雑音指数 NF_2
とします。
全体の雑音 N_total は
N_total = G_1 G_2 N_i + G_2 N_amp1 + N_amp2 ・・・(2)
となります。
右辺一項目は、熱雑音 N_i が一段目と二段目のアンプで増幅されたもの
右辺二項目は、一段目のアンプのノイズが二段目のアンプで増幅されたもの
右辺三項目は、二段目のアンプのノイズ
です。
(2)式の右辺を G_1 G_2 N_i でくくって、雑音指数 NF の式と照らし合わせると、全体の雑音指数 NF_total は
NF_total = 1 + N_amp1/(G_1 N_i) + N_amp2/(G_1 G_2 N_i) ・・・(3)
となります。
ここで
(3)の右辺の一項目と二項目は、NF_1 = 1 + N_amp1/(G_1 N_i) そのもの
(3)の右辺の三項目は、NF_2 = 1 + N_amp2/(G_2 N_i) から1を引いて、G_1で割ったもの
であるため、
NF_total = NF_1 + (NF_2 – 1)/G_1
となります。二段のアンプのNFの関係式が求まりました。
三段以上の場合も同じように考えていけば良いです。
【入力雑音 N_i について】
アンプにおける入力雑音 N_iは、アンプの入力側をインピーダンスマッチした抵抗 R で終端した回路において、抵抗 R の両端で発生した熱雑音の起電力による電流が流れたときにアンプ内部の負荷 R で消費される電力です。
温度T, 帯域幅Δf とすると、抵抗 R の両端に発生する熱雑音の電圧 V は、ジョンソン・ノイズ
V = √(4 k T R Δf)
で表され、そのとき回路に流れる電流は I = V /(2R), 負荷 R で消費される電力は P = RI^2 なので
P = k T Δf
となります。この P が入力雑音 N_i です。
ボルツマン定数×温度だけでなく帯域幅Δfもかけてあることに注意してください。
次元も[J/s]で電力の次元になっています。
NIM様
素晴らしい解説をありがとうございました。
自分では、あまりよく理解できていないテーマでしたので、正確な知識を教えていただけて嬉しいです。
N_ampの考え方は、ショット雑音やそれ以外の雑音も含めて考慮できるという点でも、優れていると理解しました。
また、熱雑音には帯域幅Δfをかけることも教えていただきまして、ありがとうございます。
記事は、残しておきますが、間違っていたこの点は訂正しておきます。