敬遠していた俳句だが、本をさしあたって一冊読んでみた
気が向くと、旧街道を散歩したりしています。そんな折、あちらこちらに句碑が立っていることに気が付くことがあります。俳句とか和歌は、昔の言葉を使っていて分かりにくいこともあり、どこにありがたみがあるのか、さっぱり訳が分からず、今まで敬遠していました。
でも、最近は、お茶のペットボトルに、応募された俳句が書かれていたりします。年齢を見ると、小中学生のような若い人の作品であることも多々あります。また、テレビのプレバトで放送されている影響もあって、人気が上がっているようです。
知り合いから、「ブログをしているのであれば、たまには俳句でも掲載してみたら」という助言もあり、さしあたって、本を一冊買って読んでみることにしました。
入門本は何冊も出ています。その中で、「夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業」を買いました。テレビに長年出続けている実力者の著書であることや、本の帯に「センス0でも作れます」と書いてあったことが選定の理由です。
内容は分かり易く、約3時間で1回目を読み終えました。率直な感想としては、「内容に無駄が無い」です。
俳句を先ずは10句ばかり作ってみた
初めに揃えるべき道具は、「ペン」「メモ用紙」「俳号」の三種の神器です。ペンとメモ用紙はすぐに用意できました。俳号については迷いました。ただ、よく考えたら、ブログのHNである「みすく」を使えばいいことに気付き、最初の関門を突破しました。
日本人なので、5音や7音は簡単に数えられそうです。でも、拗音(ゃゅょ)は、前の字と合わせて1音、長音(ー)や促音(っ)はそれだけで1音だということは、やはり教えてもらわないと分からないことでした。この知識は、実際に俳句を作るときにすぐに役立ちました。
次に型を覚えれば、もう俳句を作れるようになります。
だいたい、クリエイティブな作業は、本を読んでいるだけでは身に付かず、実際に手を動かしてみるに限ります。そこで、先ずは1句作ってみました。
- 冬麗(ふゆうらら)座右に置いた電子辞書 みすく
この寒い昨今、電子辞書片手になんとか俳句をひねり出そうとしている状況が思い浮かんで、なかなかいい感じじゃないですか。
でも、実際は、本を読んでいる途中に、たまたま目についたのが「電子辞書」。5文字なので、下五(しもご)として採用。電子辞書は目に見えるくらい近くにあったので「座右に」となり、残り3文字を「置いた」として中七(なかしち)が完成。あとは、季語の一覧から「冬麗」を選んで上五(かみご)とすれば出来上がりです。
そんな感じで続けて9句作ってみました。
- 春の宵出番間近の革鞄
- 鰯雲高級品のボールペン
- かき氷付箋の付きしカレンダー
- 雪催(ゆきもよい)磨きに磨いた虫眼鏡
- 梅の花彫刻されたお針箱
- 熱帯夜点滅している信号機
- 文化の日中古で買った掛け時計
- 星月夜(ほしづきよ)耳をつんざくオートバイ
- 夏の夜いまだ混んでる総武線
だいたい脳内作文ですが、俳句らしく見えます。
でも、実を言うと、この10句を作る間に、駄作とか、意味の分からない句もいくつかできました。それも披露しましょう。
- ソーダ水無くてはならぬ電子辞書
- 虫の声中身が空の革鞄
- クリスマスはじめのわからぬセロテープ
- 初日の出血圧予防のお味噌汁
季語は何でもOKと書いてはありますが、合わない場合もあります。一度作ってみて、良い句だと思えなければ、季語の再選択や初めからの作り直しも必要だと思いました。
12音日記に季語を取り合わせた型で10句作ってみた
次に、12音日記に季語を取り合わせた型を使って俳句を作ってみます。
- 夢の中ごはんの香せり霜柱
- 箸並べ玉子にせうゆ(醤油)風光る
- 五月晴いつもの人とすれちがひ
- コーヒーを片手に電話冬の蠅
- 秋さびし会議パソコンコピー取り
- 息白し出張帰りの時刻表
- 軽率に保存し忘れ油照(あぶらでり)
- 扇風機中身を読まずに回覧す
- 初詣今度の趣味は俳句なり
- 不眠症お前もなるのか猫の恋
う~ん。扇風機の句は意味が分かりませんね。回覧されるものの中で、内容に興味が無ければ中身を読まずに次に回すという日常作業に、扇風機というあまり関係のない季語を付けただけですからね。
切れ字でさらに10句作ってみた
最後に切れ字を使ってみます。
- 残雪や黒くはっきり日付印
- 筍や縁ある題の紙芝居
- 鈴虫や破れかかった障子紙
- 焼藷(やきいも)やすっかりやせた革財布
- 公魚(わかさぎ)や確かなリズムの台所
- 虹鱒(にじます)や引き上がらぬと泣く子供
- 朝顔や光り輝く如露(じょろ)の水
- 餅搗きや一時停止のダイエット
- 雪達磨眺めて悩む俳句かな
- 蝉時雨止みて田舎に気付きけり
この他に、一物仕立て(いちぶつじたて=季語のことだけで作られた俳句)の作り方が書いてありました。でも、一物仕立て作るには観察が必要であり、脳内作文では無理なので、別の機会にしたいと思います。
俳句はインスタグラムと同じ理屈で人気があった?!
俳句を作ってみると、季語の持つ力を感じます。季語、すなわち季節は、建物の中より屋外で強く感じられますので、旅と俳句は、相性が良いのだということが分かりました。
昔は写真が無かったので、旅中の一場面を鮮明に切り取るためには俳句を読むことが最良の方法だったのでしょう。それをみんなで共有することを楽しんだので、俳句の人気が高く、あちらこちらに句碑も立ったのだと思います。平たく言えば、芭蕉の俳句は有名人のインスタグラムに相当したのではないでしょうか。
この本に対する唯一ともいえるべき要望は、季語を使える期間を記しておいて欲しかったことです。すなわち、「春」「夏」「秋」「冬」「新年」の季語は、それぞれ何月から何月まで使えるのかを示して欲しかったです。
自分で俳句を作ったことで、にわかに興味が出てきました。この本の中で薦められていた「新版 20週俳句入門」という本を近いうちに買って、新たな俳句の型を増やしたいと思う今日この頃です。
夏井いつき:夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業、株式会社PHP研究所、2018、ISBN978-4-569-84096-3