コンデンサとインダクタに蓄えられるエネルギー

コンデンサに蓄えられるエネルギー

    \begin{align*} \frac{1}{2}CV^2 \end{align*}

です。
インダクタに蓄えられるエネルギー

    \begin{align*} \frac{1}{2}LI^2 \end{align*}

です。
これらを導きます。

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エネルギーとは、力×距離

エネルギーにはいろいろな形態があります。位置エネルギー、運動エネルギー、熱エネルギー、圧力エネルギー、等々。

一見、違うように見えますが、全てのエネルギーの和は保存されます。
ということは、何かしらの本質があるはずです。
その本質は何だと思いますか?

僕は、力×距離だと思います。

位置エネルギーは、質量をm、重力加速度をg、高さをhとすれば、mghです。mgが力、hが距離です。そのものですね。

運動エネルギーも力×距離で計算できます。
初速度0の物質が、加速度aを時間tだけ受け続けて、速度vになったとします。これを式で表すと、

    \begin{align*} v=at \end{align*}

です。このとき進む距離xは、

    \begin{align*} x=\int_0^t v dt=\int_0^t at dt=\left[\frac{1}{2}at^2\right]_0^t=\frac{1}{2}at^2 \end{align*}

です。積分を用いてすみません。
質量をmとすれば、この間、ずっと、

    \begin{align*} F=ma \end{align*}

という力を受けているので、この物体が受け取るエネルギーEは、

    \begin{align*} E=Fx=ma\cdot \frac{1}{2}at^2=\frac{1}{2}m\left(at\right)^2=\frac{1}{2}mv^2 \end{align*}

となり、よく見かける式になります。

よって、コンデンサやインダクタに蓄えられるエネルギーもこの攻め方で計算したいと思います。

コンデンサに蓄えられるエネルギー

ここでは、容量Cのコンデンサを電圧Vで充電したときのエネルギーを求めます。

コンデンサの電極間の電荷qの移動

図1:コンデンサの電極間の電荷qの移動

コンデンサは2つの電極が向かい合わせになっていて、そこに電荷が溜まる構造になっています。
上の電極に電荷Q下の電極に電荷-Qが蓄えられている状態で、電極間の電圧がVになったとすると、このコンデンサの容量Cは、C=Q/Vで与えられます。
書き直せば、Q=CVです。これは、ガウスの法則から導くことができます。でも大体の方々は、Qという量の水をCという底面積の容積に入れれば、高さがVになるというイメージで覚えているのではないでしょうか?僕はそれで十分だと思います。ということで、この導出は省略します。

さて、2つの電極の間にVという電圧がかかっているとき、中間点はV/2、中間点と上の電極間の中点は3V/4という電圧になっています。つまり、距離と電圧の関係は一次式で表されます。この一次式の傾きを電界Eと言います。電極間の距離がdなら、

    \begin{align*} E=\frac{V}{d} \end{align*}

です。

ここで、qという正の電荷を電界Eが下を向いている空間に持ってくると、qEという力が下向きにかかります。
これを電極間のdという距離を運ぶとなると、エネルギーは力×距離なので、

    \begin{align*} qE\cdot d=q\cdot \frac{V}{d}\cdot d=qV \end{align*}

が必要です(Quod Erat Demonstrandumが連想されますね)。

なんのことはない、原理を説明するため、わざわざ電界Eとか距離dを持ち出してきましたが、これらの変数は消えてしまいました。

ともかく、電極間の電圧がVのとき、qという正の電荷を運ぶためにはqVというエネルギーが必要になることが分かりました。

コンデンサに蓄えられるエネルギー

図2:コンデンサに蓄えられるエネルギー

では、電極に電荷の無い初めの状態において、必要なエネルギーはどうなるでしょうか?コンデンサには電荷が溜まっていないので、電極間の電圧は0です。つまり、qを運ぶのに要するエネルギーは0です。

念のため、中間地点も考えておきましょう。
電荷がQの半分、すなわちQ/2のとき、

    \begin{align*} \frac{Q}{2}=\frac{CV}{2} \end{align*}

なので、電極間の電圧はV/2です。このとき電荷qを運ぶには、qV/2のエネルギーが必要です。

以上のことを図で示すと、図2のようになり、結局、三角形の面積がコンデンサに蓄えられるエネルギーECになるので、

    \begin{align*} E_C=\frac{Q\cdot V}{2}=\frac{CV\cdot V}{2}=\frac{1}{2}CV^2 \end{align*}

となります。

インダクタに蓄えられるエネルギー

インダクタンスLに電流Iが流れているときのエネルギーを求めます。

ファラデーの電磁誘導の法則によれば、コイルの巻き数をN磁束をΦとしたとき、誘導起電力Vは、

    \begin{align*} V=-N\frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \end{align*}

となります。法則なので、観測した結果です。神様がそう決めたようです。
式中のは、電流Iと自己インダクタンスLの積で表すこともできて、

    \begin{align*} N\Phi=LI \end{align*}

となります。

これを話すと少し長くなります。(電流Iが流れると、磁場の強さHが現れて、それに透磁率μをかけると磁束密度Bになります。そのBにコイルの面積Sを乗じると磁束Φになり、さらにコイルの巻き数NをかけるとNΦになります。そのNΦとIとの比例係数がインダクタンスLです。でも、NとかSとかの測定にはかなりの誤差が伴うので、厳密性に欠ける気がするんですよね)
ともかく、この関係を使うと、NとLは定数なので、

    \begin{align*} V=-N\frac{\Delta \Phi}{\Delta t}=-L\frac{\Delta I}{\Delta t} \end{align*}

となります。

インダクタの中を通る電荷

図3:インダクタの中を通る電荷

つまり、インダクタンスLのコイルを上から流れ込む電流値Iが、微小時間Δtの間にΔIだけ変化すると、コイルの両端に上向きの誘導起電力Vが発生します。負の符号は、電流の変化を打ち消す向きを意味していて、電圧の方向情報として使われています。

ところで、前節で、力×距離という定義から、電荷×電圧、すなわち、qVがエネルギーということを求めました。よって、ある電荷qが、この誘導起電力Vを移動すればエネルギーが発生します。

ここで、考えてみると、電流に時間をかけた値は電荷ですよね?

今、上から下に電流が流れているので、負の電荷を持った電子は、下から上に向かって流れています。微小時間に流れる電荷量は、-IΔtです。

ここで、・・・・・・困りました。

電荷量の符号が負ではありませんか。

コンデンサの場合、正の電荷qを、電位の低い方から高い方に向かって運ぶことを考えたので、電荷がエネルギーを持ちました。そして、この電荷のエネルギーの合計が、コンデンサに蓄えられるエネルギーになりました。

でも、今度は、電荷が負(電子)です。それを電位の低いほうから高い方に向かって運ぶと、電荷が仕事をして、エネルギーを失うことになります。コンデンサの場合と逆です。つまり、電荷自体にはエネルギーが溜まりません・・・・・・

でも、エネルギー保存則があります。電荷が放出したエネルギーは何かに保存されるはずです。この系で、何か増える物理量があるでしょうか?

電流(又は、それと等価な磁束Φ)は増えますね。つまり、電子が仕事をすると、それは磁力のエネルギーとして蓄えられます

気を取り直して、電子がする仕事を計算してみると、

    \begin{align*} qV=-I\Delta t\cdot L\frac{\Delta I}{\Delta t}=-LI\Delta I \end{align*}

となります。

インダクタに蓄えられるエネルギー

図4;インダクタに蓄えられるエネルギー

電流が0からIになるまでの様子を図に表すと、図4のようになり、この三角形の面積が、電子がする仕事の和になります。インダクタは、この仕事を蓄えてエネルギーELにするので、符号を逆にして、

    \begin{align*} E_L=-\left(\frac{I\cdot -LI}{2}\right)=\frac{1}{2}LI^2 \end{align*}

となります。

まとめ

コンデンサとインダクタに蓄えられるエネルギーを求めました。

インダクタの説明で、電荷の符号が負になってしまった時にはどうしようかと思いました。
でも、そこで考察したところ、電子が放出したエネルギーがインダクタに蓄えられる電流のエネルギーになることが理解できました。

コンデンサとインダクタに蓄えられるエネルギーが求まると、LC発振器や水晶発振器の議論ができるようになります。

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