ボード線図は、2本のプロットから構成され、制御システムの周波数特性を把握するために使用します。
1本目のプロットは、横軸を対数表示の周波数、縦軸をdB表示のゲインとして作成します。
2本目のプロットは、横軸を対数表示の周波数、縦軸を°(度)表示の位相として作成します。
横軸は共通化できるので、普通は1つのグラフ上に示します。
Excelでボード線図を作図してみよう
何はともあれ、ボード線図を作成してみましょう。
グラフにすべき関数は伝達関数(でんたつかんすう)といいます。ここでは、
(1)
とします。この式は、周波数帯域が1 kHzの一時遅れ系を意味します。電子回路であればRC回路等で実現できます。
まず、A1~D1にf [Hz]、G(jf)、ゲイン[dB]、位相[°]と入力します。これらは表とグラフのタイトルになります。
A2からA22には「=10^((ROW()-2)/5)」という式を入れましょう。すると、1 Hzから10 000 Hz(10kHz)までの周波数が準備できます。
次に、次の式をコピーし、B2~B22にペーストします。
=IMDIV(COMPLEX(1,0),IMSUM(COMPLEX(1,0),IMDIV(COMPLEX(0,A2),COMPLEX(1000,0))))
複素数の計算のため、複雑に見えますが、上の(1)の式を表しています。
僕は、Excelで複素数が扱えることを1年くらい前に初めて知りました。
次に、C2に次の式を入力します。
=20*LOG(IMABS(B2))
これは、
(2)
を意味しており、ゲインをdBに換算する式です。
C2をコピーし、C3~C22を選択してからEnterキーを押して貼り付けます。
さらに、D2に次の式を入力します。
=DEGREES(ATAN2(IMREAL(B2),IMAGINARY(B2)))
これは、(1)の複素数の位相を算出する式です。ATAN2は、タンジェント(正接)の逆関数で、-π~-πの範囲のラジアンを算出します。DEGREES関数は、ラジアンを度に変換します。
数値が求まったので、A列とC列、A列とD列のプロットを作成していきます。
ただ、Excelのグラフの正式の作成方法って、正直言って、よくわかりません。いつも適当に作り、修正しながら辻褄を合わせています。
したがって、以下は参考手順です。ご自身の作りやすい方法で似たような図を作図いただければと思います。
- 表の領域から離れた場所(例えばF1セル)をクリックする
- 「挿入」タブ→「散布図」→「散布図(平滑線)」を選択
- 作成された白いボックスの中で右クリック→「データの選択」をクリック→「追加」をクリック
- 系列名:C1
- 系列Xの値:A2からA22を選択
- 系列Yの値:C2からC22を選択
- 「OK」→「追加」
- 系列名:D1
- 系列Xの値:A2からA22を選択
- 系列Yの値:D2からD22を選択
- 「OK」
ここまでの手順で上に示した図となります。
引き続き、以下の手順を実施します。
- 横軸の数値をダブルクリック→軸のオプション
- 最小値:0
- 最大値10000
- 「対数目盛を表示する」にチェック
- 表示形式→表示形式コード欄に「##0E+0」→「追加」をクリック
- 「デザイン」タブ→「グラフ要素を追加」→「軸ラベル」→「第1横軸」
- 「軸ラベル」を選択→そのまま「=」を入力すると数式バーに「=」が表示される→「A1」セルをクリック(数式バーが「=Sheet1!$A$1」のようになり、軸ラベルが「f [Hz]」と表示される)
- 「デザイン」タブ→「グラフ要素を追加」→「軸ラベル」→「第1縦軸」
- 「軸ラベル」を選択→「=」を入力→「C1」セルをクリック
- 「デザイン」タブ→「グラフ要素を追加」→「軸ラベル」→「第2縦軸」
- 「軸ラベル」を選択→「=」を入力→「D1」セルをクリック
- 「デザイン」タブ→「グラフ要素を追加」→「凡例」→「上」
- 位相のプロットをクリック→データ系列の書式設定→第2軸(上/右側)
- 第2軸の数値をクリック
- 最小値 -90
- 最大値 135
- 単位主 45
- 第1軸の数値をクリック
- 横軸との交点→軸の値 -25
すると、このような図が出来上がります。
これがボード線図です。
まとめ
ボード線図を作成したことが無い方は、雰囲気を知るために、手を動かして作成することをお勧めします。
また、本記事は、複素数の四則演算をしたり、DEGREES、ATAN2といった便利な関数を使ったり、軸ラベルにセルの値を使ったりするなど、小技をいくつか使っていますので、必要に応じてご活用いただければと思います。
2021/06/19追記:
ボード線図は、系の安定性を議論するためにも使用します。
以下の記事で、発振器のボード線図について述べましたので、よろしければご覧ください。

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