「高速」と「高周波」入門 | 言葉の定義、測定器、回路技術等の概要

「高速」と「高周波」の概要を述べます。

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高速と高周波の違いって何?

先ず、高速と高周波という言葉ですが、何が違うでしょうか?
特に違わない?

そうかもしれませんが、僕の職場では次のように使い分けていました。

  • 高速技術 :直流から高い周波数までを取り扱う技術(広帯域)
  • 高周波技術:特定の高い周波数帯域を取り扱う技術(狭帯域)

無理やり付け足した感のある「帯域」って何ですかね?先輩が使っているのを聞いて、定義も分からないまま、何となく使い始めて、現在に至っている言葉の一つです。
「帯」には細長いイメージがあります。でも、直流から使うとなると幅広いから広帯域ってことですか?こうなると細いんだか、広いんだかよく分からずに、イメージがぐしゃぐしゃです。

今までの経験によれば、「周波数範囲」程度に脳内変換すれば大丈夫なようです。

高速技術と高周波技術はどちらが難しいの?

取り扱う技術がそれぞれ違うので、どちらも難しいです。

ただ、素子をパッケージに入れて所望の性能を出すという実装技術においては、高速技術の方が難しく感じました。

ここからは、高速技術と高周波技術に分けてお話を進めます。

高速技術

高速信号用の測定器には何があるの?

この世において、測ることができないと、モノを作ったり比較することができません。

え?縄文時代の人は測っていなかったって?

そんなことはありません。現物合わせで体格に合わせて着物や武器を作っていたはずです。

それはさておき、高速技術においても、高速信号を測るための測定器があります。
代表的な測定器は、オシロスコープです。といいますか、それしか思い浮かびません。
オシロスコープは、横軸に時間、縦軸に電圧をとり、信号波形を見るための測定器です。

高速信号として何があるの?

高速信号として、通信用の信号や電気機器内部の信号などがあります。
その他、雷などをはじめとした自然の電気信号や雑音も観測対象になるでしょう。

高速信号を扱うための回路技術は?

信号を保持するためのサンプル・ホールド回路(トラック・ホールド回路)、アナログをデジタルに変換するAD変換器、その逆のDA変換器、各種ロジック回路等があります。

直流から高い周波数までの広帯域を扱いつつ、これらの回路を構成するためには、差動回路という技術が重要です。

高周波技術

高周波信号用の測定器には何があるの?

高周波信号を測るための測定器には、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)、スペクトラムアナライザ(スペアナ)、周波数カウンタ、パワーメータ等があります。どれも、僕が大学時代には見たことも聞いたことも無かった測定器でした。

ベクトルネットワークアナライザ

ベクトルネットワークアナライザは、2つのポートを持っています。ポートとは、電力の出入口です。
片方のポート(例えばPort 1)から特定周波数の正弦波をDUT(Device Under Test=検査対象)に与えた状態で、入力したポート(Port 1)に戻って来る信号と反対側のポート(Port 2)に抜けていく信号について、振幅と位相を測定します。周波数を変化させて連続的にこの結果を記録すると、検査対象の周波数特性が分かります。フィルタなどの特性や増幅器の増幅度を評価する場合に使います。

ベクトルネットワークアナライザは測定の直前にSOLT(Short-Open-Load-Thru)やTRM(Thru-Reflect-Match)といった校正という作業を実施します。面倒くさいですが、この作法をすると、高周波の測定をやっているという実感が湧いてきます。

スペクトラムアナライザ

スペクトラムアナライザは、信号を入力すると、周波数ごとの成分に分けて、その電力値を画面上にグラフ表示してくれる測定器です。発振器の評価をしたり、無線通信信号の電力分布を調べたりすることに使います。

周波数カウンタ

周波数カウンタは、その名の通り、周波数をカウントします。
使い方は単純ですが、高周波信号をカウントして表示するスピードは速いので、内部ではかなり高度なテクニックが使われているはずです。

パワーメータ

パワーメータは、入力された信号の電力値を表示します。
周波数によって、素子の感度が異なるので、単一周波数を入力することが基本です。

高周波信号として何があるの?

発振器や増幅器の出力、無線通信用の信号、レーダ用の信号などがあります。

高速信号を扱うための回路技術は?

発振器、増幅器(アンプ)、ミキサ、フィルタ、スタブ、カプラ、アンテナ等があります。

ミキサは周波数変換器です。

    $$cos(A)\cdot cos(B)=\frac{1}{2}\left\{cos(A+B)+cos(A-B)\right\}$$

を利用して、周波数変換します。

フィルタは、特定周波数帯域の信号を通過させたり、阻止したりします。

スタブは、電力を有効活用できるように調節するための受動素子です。

カプラは、特定周波数の信号を分岐する受動素子です。

スミスチャートって何?

これを出しておけば、高周波をやっている気分になるグラフです。
以下に示す形をしています。

スミスチャート

スミスチャート

任意の複素インピーダンスはこの図形の1点で示すことができます。
例えば、点が左端にあれば0Ω、真ん中にあれば50Ω、右端にあれば∞Ωです。
また、真上にあれば誘導性の j50Ω、真下にあれば容量性の -j50Ωです。

スミスチャートを使うと、ある周波数において、素子の性能を最大限に引き出すための工夫(例えばマッチング条件)を定量的に検討することができます。

まとめ

本ブログでは、今後折に触れて、高速・高周波に関する記事を書こうと思っています。
そのとっかかりとして、本記事では概要を書きました。

高速・高周波の分野には、そこそこの年月携わってきましたが、間違いを述べている可能性があるので、お気付きの点がありましたらご指摘ください。

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